映画 ちょっと今から仕事やめてくる 講評
映画 ちょっと今から仕事やめてくる 講評
私はJALやANAの中では ひたすら映画をみている。
あらすじをざっと見て面白そうなものを選ぶ。
あくまでざっと見て選ぶ。
そういう中で普段自分がじっくり選ぶときには、触れないような分野のものを鑑賞できる。
先日ANAの中で見たのは
映画 「ちょっと今から仕事やめてくる」
2年ほど前に出版された北川恵海のベストセラー小説の映画化。
あらすじ
主人公は就職戦線で出遅れ、いわゆるブラック企業に勤める。
いわゆる広告を取って来る仕事の様。
強烈な成果主義。契約が取れない人間に対しては「お前は俺や〇〇(成績優秀者)の利益を食いつぶす人間だ」とパワハラを賭けられる。
ストレス、睡眠不足でもうろうとして、電車に飛びこもうとした瞬間に小学生の同級生だったという「山本」が現れる。
主人公は「山本」との交流の中で精神の均衡取り戻していく。
仕事にも前向きになり、1度は大きな取引をまとめかけたが、発注ミスでさらに会社に迷惑をかける。
そんな中「山本」は仕事をやめるように主人公に説得する。
実は「山本」は双子の兄が似たようなブラック企業で働き自殺してしまった過去を抱えていた。
主人公が仕事をやめようとしたとき、営業成績NO1の先輩女性が発注ミスは自分が主人公を蹴落とすための工作だったと告白。
その先輩女性への対応も、やめる時のパワハラ上司に対しても、主人公はさわやかに、明るく答える。
そして会社を辞めたあと、明るく晴れ晴れとした笑顔でスキップしながら、「山本」の待つ喫茶店に向かう。
最後には、主人公は「山本」と「山本の兄」が夢見ていたバヌアツの子供たちのボランティアをスタートするところで終わりになる。
感想。
現代の日本の厳しい一面を描き出す、一つの秀作だとは思う。
そしてその苦しさを、本来はあり得ないようなファンタジーで幕を引く。
ブラック企業をこの映画のように余裕をもってさわやかな笑顔でやめられる人などほとんどいない。
辞めた後にスキップできるような希望を持っているひとなどどれほどいるのだろうか。
いないからこそ、そんな一コマを映画の中だけでも感じたいという視聴者の願いをかなえているのかもしれない。
ブラック企業をやめたときには、その精神も体力も経済力も疲弊尽くされている場合が多い。
よほど冷静に、客観的に、慎重に次を探さなければ、転職した先も似たようなブラック企業ということも多い。
少なくとも割合の上でいえば、次もブラック企業という可能性はますます高まるだろう。
(1人1人に限っていれば、次はまともな会社ということもあるだろうが)
今の日本の実態はもっともっと、暗く重く先の見えないものだと思うのが、いかがだろうか。