ある日本人の選択
ある日本人の選択
10年ほど前、私がタイの北部を個人旅行していたときの出来事。
当時はまだ海外で携帯を持つことが普及した出したばかりのころ。
つまり私はもっていなかった。
ツアーに出かけた私は、バスの中で次の予定に間に合わず困っていた。
日本人らしい同年代の男性に声をかけて携帯を貸してもらった。
私には珍しく、気が合って、そのあとに半年に1回くらいずつ会うような関係が続いていた。
ある時、彼は「日本の会社を辞めてタイに来ました」という。
私が理由を聞くと「日本の生活がつまらなくなってしまった」とのこと。
確かその時、彼は、40代前半。
特に若々しいわけではないが、年相応の中年男性だった思う。
まだ当時は日本人はタイではモテた。
1年後彼は、
「40代の自分が4人の女性と付き合っているんですよ」と嬉しそうに話していた。
そして彼はそのうちの1人が妊娠したことで、日本人流に責任を取って結婚した。
その後、数年間は私と交流が続いた。
彼は日系会社の現地雇用員として働きだした。
日本円にして20万円ちょっとの給料。
中進国となったタイ、バンコクでもまあ普通よりやや上の生活ができていたようだ。
ただ、生活の中心は子供(娘)になる。
夫婦の愛が消えても彼は、娘のために全力を尽くす。
家賃3000バーツ(今のレートで1万円)安いところにも引っ越した。
「娘にいい教育を受けさせるためには、お金が必要なんです」と彼はいった。
そしてぼそっと言い残した。
「タイに移住しても特に何かが変わるわけではありませんでした。家族のために必死に働き、将来に備える。子供のために頑張る」
「一番 楽しいのは、日本で稼いで、一定期間タイで楽しむという生活スタイルだと思います」
特に連絡を取り合うこともなくなり、もう5-6年が過ぎる。
もう娘さんは中学生くらいになったはずだ。
どのような生活をしているのだろうか。
今度、連絡を取ってみようかなと思っている。